2.アタッチメントと育て直し(1)
前川先生、ありがとうございました。
前川先生は私にとって、年はそういう関係にならないと思いますが、お父さんみたいな、育ての父親という感じです。配布された、こんな立派なパンフレットをつくっていただいて、これを全部話すわけにはいきません。一つの物語風になっておりますので、今日付け加えるところをもとにして、ぱっと見ていけばわかるという形になっています、後ほどゆっくりご覧ください。
わたしの話はアタッチメントが壊れたあるいは不十分な子にどのようにそれを改善していくかという話です。
まとめの表、「育て直しと発達の里程標」は下の図の通りです。
最初にアタッチメントということを言い始めた人々は、実験心理学の人たちです。すごい実験、赤ちゃんにとっては過酷な実験です。どういうふうにしてやっていたかというエインズワースの実験SSPが、大きい図にして出ていますので見てください。
「育て直しと発達の里程標」は私が前川先生のもとでやったことから考えついたことです。前川先生のところで、結局、医局時代、35年間、いさせていただいて、臨床心理士は本業だけでは食っていけません。今年やっと国家資格になりましたが、食っていけないので、途中から大学に移りました。大学に移って、ずっと臨床をやってきて、しばらくアタッチメントという概念を忘れていましたのですが、育て直しということにとても似ているのではないかと思い表にまとめると、こういう1枚の表になった。
あと、子どもはどうやって母親から離れるか、今、前川先生に話していただいたのを、次のページの分離個体化の図で見ると、(今では一番、最初のお母さんの中に子どもがいるとかいうのは否定されていまして)実際はⅡから始まる、Ⅰを入れるとこれじゃあお母さんの中に飲み込まれているような、図になりますので、これは否定されています。
それから、下の図の4因子仮説、これは、今になってその価値がわかる、貴重な考え方です。早稲田大学の恩師の小嶋謙四郎先生は、まだご存命で、90を超えていらっしゃると思うんですが、小嶋先生が若いころに、我々は18、19歳のできの悪いゼミ生の集まりだったのですが、そこでこの概念を言い始めたボルビィという人が、まだ存命の頃でしたが、直接訳して、訳してといってもほとんど小嶋先生が訳していました。
先生は予習もしないでやってきて、その現場で訳していくのを横で我々が見ているという、今では考えられないような、今ならそんな先生は首になっちゃうと思いますが、そういう授業をされていて、それがとても味わい深くて、そこにいた五、六人のゼミ生はみんな、その後、臨床家になって、かつ、どこかで教える立場になってユニークな臨床家にして教育者になっています。
自立、一人でいる能力無くしては受容に意味もないという、自立とアタッチメントは車の両輪であるという考え方です。
先の前川先生のお話の中にこの表の学術的な部分は全て含まれています。こういう学術的なバックボーンをもってらして、何も文句を言わない前川先生の教室で心理の仕事をし、ずっと親子(母子)に会ってきたということが、私のアタッチメントを育てて、自立して私は力の限界まで育ったんじゃないかなと思います。
ついでに子どもも育てまして、パートナーが家庭裁判所の調査官、非行少年を扱う仕事をしていました。ずっと共稼ぎでした。今ではそんな呼び方しませんね。共働きと言います。もはや両方が仕事をし、子育てをするというのは当たり前です。
基本的に親子に会って、そこで一緒に遊んで、心から自由に遊んでいくうちに治っていった。私の御師、小嶋先生もそういう体験をもつ先生で、若い頃、大学を出てから長野赤十字病院に勤め、子どもとままごとをして、子どもを治してしまう先生がいるということで、有名になった。だから、親つまり小嶋先生と同じような道を私も歩んできたと思います。
それから、前川先生という、いい親を得て育っていきました。育つって、こういうことなんじゃないですかね、良き関係をもらってそれを次世代に伝えていく。アタッチメントという難しい言い方をする必要もない。そしてもらっていない人には保育の専門家があげればいい。ことは単純です。