3.保育における愛着形成(13)
ところでみなさんはどんな保育をよい保育と思われますか。子どもはよく「見て!見て!」って言いますよね。子どもは、大人の眼差しを受け止めると、「見てもらえている」という安心感を抱いて、あれこれチャレンジします。そこで転んだりぶつかったり失敗したりする。
この保育の質を捉える指標は、私たちの研究仲間で作ったものです。保育の社会的文化的背景とか政策・条件などは下の方に、そして一番上に保育者と子どもの関係が置かれています。保育室の広さや充実した施設設備ももちろん必要ではありますが、子どもにとってみれば保育してくれる人が自分を思いやってくれ、励まされつつ心踊るような体験ができ、疲れたら甘え、そこを拠点として再び飛び出していけるような保育者との関係があれば、しあわせですよね。是非、みなさまの力を合わせて、よい保育を創りだす努力をしてください。
最後に、落ち着きのあるよい保育を展開するための工夫を紹介しておきましょう。一つは子どもが自ら遊びやすい場をつくってあげることです。おもしろそうなところがあれば、子どもはひとりでに保育者から離れて、集中して遊びます。遊ぶところが用意されていないと、まとわりついたり、子ども同士で駆け回ったり、大変な事態になるわけですから、まずは子どもの遊ぶ拠点をつくっていくといいのではないかと思います。ここが保育者と子どもの関係と並んで大事な点です。そうすることによって子どもの動きも変わってきます。保育環境を変えることでいろいろな変化が目に見えますから、先生方も、「やった!」という充実感を味わうことも出来るわけですね。
これは、うちのよつばのおうち(地域保育所)の写真です。押し入れを改造したりして、隠れ家にもなり、自由に遊べる場にもなっております。子ども自身であそこに行けばお母さんごっごができるとか、絵本を見たいときはあそこへ行こうとか、子どもの見通しの立つ環境をつくれば、子ども自身が動き出すわけですね。
二つ目は、保育環境づくりをさらに推し進めると「食・寝・遊の分離」になります。食べるところ・遊ぶところ・寝るところを分けて、子どもが生活の見通しをもちやすくする取り組みです。実際に工夫した園では、保育者がその場に立つだけで、子どもの方は「ああ、ご飯だな」とか、「お着替えするんだ」とか、次の行動の見通しをもって動こうとしています。保育者がいちいち口で言わなくても、保育者がその場にいることで、ちゃんと並んで順番を待つような行為が幼い子どもにもできるようになるのですね。