3.保育における愛着形成(8)
その次に共同研究で着手したのが、1歳児の入園に伴う分離不安のデータ収集です。
その頃にはビデオも入手でき、研究チームもありましたから、分離不安の研究に取り組むことにし、4月の入園の状況を静岡と東京でデータ収集することにしました。
先ほど井原先生や前川先生がおっしゃいましたように、身近な大人に対してアタッチメントが形成されていくのが1歳くらいです。したがって1歳児入園は母子分離不安がもっとも高い時期ということになります。母親にアタッチメントを形成したのに、母親が職場復帰していく。子どもにとっては、親と別れるのはパニックですね。これを分離不安曲線といいますが、不安曲線は1歳台でピークに達し、2歳ぐらいまでずっと続きます。ですから1歳児保育は子どもにとってはとても過酷なことなのです。
資料3「新入園児の受け入れの体制」は1歳児4月入園当初の新入園児の泣きと保育所のかかわりを記録したものです。1歳児クラスの場合、ほとんどの子は0歳児クラスから進級してきますので、新入園児の方が数少ないのは分離不安の強い1歳児の保育としては望ましいと思われます。分離不安を抱えた1歳児が、家族との別れに際してどのように泣いて不安を示すか、それをどんな体制で受けとめ保育するかをビデオに収めました。園によっては、最初の1週間だけは特別な保育シフトを敷いて、毎朝決まった先生が受け入れるようにする園もありました。その一つがききょう保育園です。Mちゃんは初日、すごく泣きましたが、比較的早く泣きがおさまっていきました。同じ先生が受入れていても泣きがずっと続く子もありますから単に保育体制だけではないと思いますが、不馴れな子どもがこの先生のそばにいればよいと心のよりどころが見つかりやすい保育というのは、安定感があっていいなと思いました。ここから私たちは、担当制保育や持ち上がり担任制にも関心を払うようになっていきました。