3.保育における愛着形成(14)
三つ目には、そのように整えた保育環境の中で、保育者が子どものみたて・つもり・ごっこ遊びにどうかかわるかです。ここが、保育者が子どもの内面を理解し共感するための決め手と私は思っています。子どもの満足感・充足感を満たすうえでとても重要な点です。
子どもは自分がいままでに見聞きしたことを心にため、みたて・つもり・ごっこ遊びの中で再現しようと懸命です。泥団子をもってきてくれたとき、そこにどういうイメージがかぶせられているかを素早く推量し、その子のイメージに寄り添うことが大切なのですね。子ども自身のイメージにピタッと合った言葉を聞いた子どもは、「僕をわかってくれた!」「私をわかってくれた!」「せんせい、だいすき!」と思うでしょう。1歳児クラスでの出来事ですが、宅急便屋さんになって配達に来たMくん。大きなビニール積み木を「ハイ、おみかん」と担任のH先生に渡しました。ところが先生は箱に入った蜜柑とは理解できなくて、怪訝そうな表情をします。意図が通じなかった2歳半のMくんはパニックに陥って、そのビニール積み木を部屋の隅めがけて投げつけ、床にうつ伏せに…。子どもの遊びはその子自身をかけた真剣勝負なのだと思わされた事例の一つでした。
最後は、結局、「保育者と子どものかかわり」に戻ってきました。子どもとの応答性豊かな保育が出来れば、先生方も「疲れた、疲れた」、「ああ、今日も子どもに振り回された」「担任同士の関係が嫌だった」と疲労感をため込む生活から、「ああ、子どもとあんなことをしゃべって楽しかった」「あんなことを言っていたとスタッフ同士で話し合えた」と子どもに寄り添う保育者本来の心もちに立ち返ることが出来るのではないでしょうか。