3.保育における愛着形成(6)
2.「保育における愛着形成」の研究と実践
ここから「愛着理論を保育の場へ」という取り組みについてお話しするのですが、これもなかなか難しいことですね。まず、現場が忙し過ぎます。乳児保育の基準が保育者1人に子ども3人ですね。保育者は母親の3倍仕事をしなきゃならないわけですが、3人を抱きかかえてもいられないですね。ですから、保育者と子どもとの間に愛着形成を!と提唱しても、「なに夢のようなことを言っているの!?」と怒られそうですよね。
この乳児の写真をよくご覧ください。この子たち笑っているように見えますが、みんな泣いています。日本の子どもさんを出すと支障がありますので、外国のお子さんを借りてきましたが、助けを求めるように泣いていますね。園で子どもたちがこういう状態で放置されているとしたらどうでしょうか。家庭でも親にネグレクトされたら、こういう状態になりますね。子どもへの不適切な取り扱いを「マルトリートメント」と言いますが、それは家庭でもあり得るし、園でもあり得ます。虐待も、家庭でも起こり得るし、園の中でも然りです。それらは力のある大人とか弱い乳児・幼児との関係の中で生じてくることです。
殊に赤ちゃん、0歳児は何も言えない。「こうされたよ」って言いつけることもできない。そういう幼子を園に預ける母親たちは内心すごく心配しているけれども、保育の実際を知るすべはなかなかありません。保育中の映像を配信している園もあるようですが、多くの場合手がかりとなるのが連絡帳ですね。「機嫌よくやっておりました」って書いてあったら、「ああ、よかった!機嫌よく元気に過ごせて」と思うしかないわけです。ですから社会的に組織されている保育の場は、出来る限り子どもの気持ちに寄り添い、優しくあるように、スタッフ全員が気心を合わせていく責務があると思うのです。