4.総合討論(2)
前川
スマホ子育ての問題を複雑にしているのは、現在の20代から30代の母親は携帯をやり放題で、触れ合い子育てをされた経験がない親が多く、兄弟も少なく、赤ちゃんを抱いた事もなく、子どもの育て方をまったく知らないからです。
「子どもを産んだら子育てが出来る」の考えは間違いです。母親になるには、時間と支援が必要で20歳になるまで支援が必要です。社会が複雑になっているので、ゆっくりと親になるための支援、相談が必要なのです。
お産の後の母親は共同養育のシステムがないので不安定、イライラ、自信喪失の状態にあります。園は保育の専門家が乳幼児の面倒をみて育てる、現代版の共同養育の場の一つの考えられ、現代のママたちに対応するのに最も適当な場と考えられます。
母親への対応は
- ①母親を全面的に受容する。スマホ育児は現代社会の犠牲者と考える
- ②母親は赤ちゃんと同じ5か月、未熟親、子育てが出来なくて当たり前
- ③親の良いところを見付けて伝え、ほめる。親は自分が好きになれないと子どもを好きになれない
- ④親子と一緒に楽しく遊ぶ、自分の子の楽しそうな様子に親心が刺激される
- ⑤親の話に関心を示し、全面的に受容する
乳幼児は我慢する力がありません。子どもが騒ぐ時にスマホを使わせると子どもはまた使いたがります。使いたがるから、また使わせる。使用頻度が益々増えて行く。子どもの抵抗が強くなるから益々取り上げ難くなってきます。長時間毎日使うようになります。依存状態になってしまいます。多くの保護者は良くないと思いながら「おとなしくして欲しい」と思ってスマホを使っています。世間の目が冷たいからです。赤ちゃんが泣いたら、ギョロッと睨まれます。子どもが走りまわったら、うるさいなという顔をされます。他の人に迷惑が掛からない為にスマホを使っているのです。
1983年にファミコンが発売、生まれたときから家でゲームができる環境、85年から90年ビデオの普及、録画してみるのが当たり前、ゲームボーイが1989年、物心がついたときからやっている、中学生、高校生になったときには携帯はやり放題です。
テレビやゲーム、携帯で育ってきているのです。実体験よりメデイアの間接的体験の方が多いから、人との関わりはあまり得意ではありません。特に、人との関わりが深くなる思春期に携帯に頼っているので、人との関わりがあまり上手でない人が多い。自分でいろいろの事を体験していない、失敗体験も少ない、成功した体験も少ない、自己肯定感・自尊感情が低い。親の責任ではない、時代の犠牲者なのです。赤ちゃんを育てるのに必要なことを知りません。赤ちゃんに関わったことがない、判る筈がないのです。どんな親でも子どもに良くなって欲しいと思っています。子育ての知識や経験が全くない、現在の母親を支援するのはこのことを知らなければならない。泣き叫んでどうにもならない乳児を泣きやませる方法の一つがスマホ育児なのです。園で子どもの元気な姿を見せ、親心を刺激してください。「してみせて、言って聞かせた、させてみた、誉めてやらねば、親は育たない」根気よく、親を育てて下さい。母親は現代社会の犠牲者なのですから。