2.アタッチメントと育て直し(5)

では、次をお願いします。

これは先ほど前川先生に触れていただいたことです。アタッチメントだけが強調されて、特にB型というのは安定した形だと言われているので、それが強調されるんですけど、ほんとうは子どもって、見知らぬところに来ると、お母さんに顔をくっつけて、グニュグニュッてして、その後母親から離れていく。自然に離れて楽しく遊ぶ。これが基本だと思うのです。だから、自立するための依存のことを甘えという、いい日本語があるのだと思います。甘えというのは、多分ひとり立ちして、一人でいることができる能力を育む。実は一人で何でもできたほうが気は楽です。もう依存はいいやっていうところまで持っていってあげることを含んだ甘えという言葉、この日本語はとてもいい言葉だと思います。

次の図にアタッチメントのタイプ分けが書いてあります。今お話ししましたA型、B型、C型とあって、B型というのがすごくいいのですよね。

アタッチメントの3つの形

  1. A型 回避型
  2. B型 安定型
  3. C型 アンビバレント型

具体的にどう測定したか、次のスライドを上げていただいたほうがいいと思います。

SSP エインズワース

我々の感覚から言うと、ひどいことをしているでしょう。こんなことをやって、この三つに分けたんですよ。ストレンジャーがいる。初めて会った人がいて、お母さんはいなくなって、帰ってきたときにどうするかってみる。それで判定している。ああ帰ったねと安定して母を迎える。そんなでき過ぎた子がいるのかなと思います。ここでお母さんに怒ったり、くっついたりという厄介な子の方が私は自然な気がします。

あと、回避型というのが昔は少なかったけど、増えています。今の大学生に聞いてみると、回避型が2割くらいになっている。つまり、相手に深く近寄らない。スマホ的なつき合い方ですよね。先ほど前川先生にいっぱい例を挙げていただきましたけれども、これは必要上、出てきたんだと思います。

なぜ必要上かって、根拠を言うと、次の図を見てください。

アタッチメントパターンの国による違い

日本のところを見ていただくと、大体8割は安定型でしょう。つまり、こんなに安定していたんです。だけど、そのころから西ドイツ、ドイツは既に一つのドイツになったのですが、49%がA型なんです。何となく昔のドイツ人ってこんなイメージがあって、私なんかいまだにこんなイメージを持っています。ドイツも今は変化していると思います。アメリカは、B型、日本に次ぐぐらいにはあるけれども、A型も結構多いですね。アンビバレントな人というのはその当時からアメリカでは、ヒラリーが泣いちゃったら大統領には不適格だと言われるぐらい、やっぱりリーダーというのは安定してなきゃがアメリカ流ですので、アンビバレント型というのはこの頃から少なかったのかもしれません。

回避型というのは、どっちかというと、心の中をのぞいてみて、なぜその人はそんな人を避けたようなことをするのかというのを双方で理解して、安心感のある関係の中で見ていくしかない。ですから、一対一の治療でないとわからないし、直せない。アタッチメントが母親との間で出来ていく。治療関係のようにそれに近いパターンの中で、身につけていくしかない。

それから、アンビバレント型というのは、私はとても人間的だと思います。ワンワン泣いて解離性障害か身体表現性障害ですね、昔はヒステリーとまとめて言っていましたが、その子たちが入院すると、小児科の先生って真面目なので、これは井原先生だっておまかせ的に振るので、全部私がやっていましたけど、ワーワー騒いで、でも、騒ぐだけ騒いだら納得して大人しくなるって、とても人間的なものを感じて、私は全くそれと逆のタイプで、どっちかというと回避型に近いので、人間的だなと、変に気に入っていた。そういう女性、女性が多かったですが、不安がそのまま出てくるような、取り繕わない率直な人たち、今日の皆さんの職場ではモンスターペアレントのように、こういうタイプの人々が増えているんですね。昔に比べればですが。昔は、だって、10%もいなかった。だから、増えてきて、社会がまだその人たちにどう対応すればいいかというのを理解していないんだと思います。

昔は、回避型はとても少なくて、安定型が多い。だからあまり母子の問題等も前面には出なかった。折檻としつけはあった。でも、しつけをする資格のない人がしつけを真似て、立たせて水を浴びせて殺しちゃうのは困ります。偉そうなこと言って自分は最悪のことをしてる人たちです。その人たちの受けたしつけというのは何んだろうか、自分の受けたしつけの恨み返しみたいなものを、最も弱い子どもというものにしているんじゃないか、やくざの世界じゃないですけど、その親がやられたらやり返すという、そういうものが作用し始めているんじゃないかと。大きく言えば思います。こういう背景の中で、今、アタッチメントが問われていると私は考えます。そして、混乱型。つまり、そのものが壊れている。心理学の分野ではなくて、福祉とか政策の領分です。そういう次元の話だと思う。虐待なんかを見ると、みんな貧困と連動していますよね。そういうものとの連動がとても多いんじゃないかと思う。心理学では多分手に負えないだろうって、誰もが気づき始めていると思います。