山口桜美林大学の山口と申します。私の研究は、「身体心理学」と呼んでいますけれども、心と体の関係をずっと研究しています。特に身体接触の問題に関心がありまして、親が子どもに触れることが子どもにどんな影響を与えるかということをテーマに、いろんなデータを取ってやっています。
それで、皮膚とか触覚の問題に興味が広がりまして、例えば、「皮膚は露出した脳」という言い方もあるように、皮膚への刺激というのは脳にすごく大きな影響を与えることもわかってきました。それで、触覚の研究も手を広げてやっています。最近始めた研究としては、二つありまして、一つは、乳児院の子どもたちに、ベビーマッサージをしたり、抱っこをする。職員さんは忙しくしているので、ボランティアの方たちに入ってもらって、子どもたちを夕方の忙しい時間だけ抱っこするという活動をやっています。それは子どもたちにとってもいいことになりますし、ボランティアのスタッフにとっても、子どもとの愛着関係が築かれ、将来的に里親として引き取ってくれる方が増えるといいなという思いがあってやっています。
もう一つは、自閉症のお子さんたちに対するマッサージケアというのもやっています。通常、自閉症のお子さんというのは触れられるのを嫌がることが非常に多いんですけれども、そういうお子さんでも、お母さんがお子さんのことをよく見ながら、反応を確かめながらやっていくと、意外と喜んでくれるところもあるんですね。ですから、自閉症の子だからさわっちゃいけないというのではなくて、子どもが喜ぶところを見つけて、短時間でもいいから触れてあげる。オキシトシンというホルモンが最近注目されていますが、そのオキシトシンが子どもの中に出ることで自閉症の症状を緩和できるのではないか、そういう研究を始めたところです。
そのほかには、子どもの心と体の問題について保育園や幼稚園の先生に聞いて、最近はどういう問題が増えているのかという調査もやっています。