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財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
4.総合討論(4)

それから、「うちの中で誰か一人がインフルエンザなどにかかっているときにワクチンはやった方がいいですか?」と質問がありますが、この「など」は、なかなか病気によって違うので難しいですけれども、インフルエンザの場合、5人家族でお父さんがインフルエンザにかかる。本当は子どもがかかるというのが一番多いのですけれども、お父さんが外でうつってきて、うちに帰る。広い家を持っているほうがずっと少ないですから、大体みんな同じところでご飯を食べたり寝たりするでしょう。離したとしてもせいぜい一間です。

熱が出たときに既に一緒にいるなら、まず、うつっていると考えたほうがいいから、ワクチン接種は無駄だと思います。でも、先ほど話したように、そのインフルエンザは香港かもしれないので、みんなでB型を防ぎましょうというなら、やはり接種したほうがいい。そこは、接触しいる時間や、流行のパターン、場合によってはお金の相談になってくるかもしれない。決まった方法のない〝応用問題〟の解決になってくると思います。ただ、仮にその人が受験があるとか、あるいは何か行事がある。これは、やはり少しでもリスクを避けるという意味でやっておいて悪くはないだろうと思います。

はしかや水ぼうそうが園や学校ではやった場合、早く見つけて早くワクチンを接種すればワクチンが間に合う、つまり病気を防げることがあります、それから、その第一番目の子からの感染は防げないかもしれないけれども、もう既にこの子がほかの子にうつして、そこからうつるという、二次、三次感染は防げるようになりますから、やはりそういう場合、すぐに接種するというのは大きい意味があります。病気によって違いが出てきます。

それから、「インフルエンザの登校基準は?」というのはなかなか難しい質問です。というのは、いま、学校保健安全法のほうで改正をやろうとしています。ですから、いまのところ、基準はあくまで「解熱後2日たつまで」というふうになっています。保育園のほうは保育園のガイドラインというのがあって、そこは「3日」というのをやっていますけれども、学校保健安全法のほうが親法みたいなものだから、そっちを尊重するということがありますけれども、幼稚園、保育園の小さい子のほうがウイルスの排泄時間は長く、治ってからもより、うつす期間が多いから、本当は長いほうがいいのではないかというのが保育園のガイドラインで出てきた考え方です。したがって、ルール上、今のところ二重構造になっているので、それを何とかしようというのも、改正の意味の一つです。いまのところは現行のままですが、来シーズンには改正が行われていると思います。

それから、「うちの子はタミフルを使って熱が下がっちゃったんだけど」という方も当然出てきます。タミフルなどの抗インフルエンザ薬を使った場合、熱は早く下がり、人にうつすようなウイルス量も減ってきます。しかし、他の人にうつさなくなるくらいにまで減ってくるのは結局、使用してから5日間ぐらいかかります。つまり、薬を使わずに自然に熱が下がってきたのとタミフルで早めに下がった場合と、結局ウイルスが消えてくるのはどちらもほぼ同じ頃、ということになります。人に「うつすことを防ぐ」という意味では、私たちは、熱がちゃんと下がって2日間か、あるいは、発症から数えて5日間、どちらか長いほうが休む期間としては適当です、と申し上げています。

しかし、難しいのは、「だって、早く働きに行かないとダメだから、保育園で預かってください」、そういう話になると、これは医学的ではない部分になります。そこは園医さんの判断とか、いろいろなことが出てくると思いますけれども、学校保健安全法のほうは、近々、改正されるだろうと思うので、少し混乱は解決するのではないかと思います。

それから、卵アレルギーは、これは本当に多い質問ですけれども、はしかのワクチン、風疹ワクチンの場合は、卵アレルギーは絶対と言っていいぐらい、問題ないです。鶏卵の成分がワクチンには入っていないからです。インフルエンザのワクチンの場合はちょっと違って、ワクチンのもとにするためにインフルエンザウイルスを増やすのには鶏卵を使うんです。卵の中でウイルスを大量に増やして、それを原材料にするから、相当きれいにしても、最終的なワクチン液の中にはほんのちょっとだけ卵の蛋白が入ってきます。

でも、この卵の蛋白というのは、卵を食べた量に比べれば全然微量なので、ほとんど反応が起こらないから問題ないですけれども、いままで、卵あるいは卵が含まれているものを食べた後でじんましんが起きたとか、ショックを起こしたとかいう方、あるいはアレルギーがあるといけないので卵を食べさせていない(食べたことがない)というような人のインフルエンザワクチンの接種は、ちょっと警戒したほうがいいです。そこは担当医というか、かかりつけの先生に相談していただいて、「この子なら大丈夫だろう」とか、「この子はやめたほうがいい」とか、判断していただいた方がいいと思います。先生によっては、そこで検査をすることがありますけれども、ワクチンに入っている卵の蛋白の量は、その検査をする卵の蛋白の量よりもはるかに少ないので、あれでは出てこないことも珍しくありません。結局、そこはやってみなければわからないところで、慎重度をどの辺にするかというところになります。少なくとも、いま申し上げたように、卵で蕁麻疹(じんましん)が出た人、ショックを起こしたことのある人、出る人と、卵を食べたことのない人には、インフルエンザワクチンの接種はやめたほうがいいだろうと思います。

以上がインフルエンザ関係です。

横井水痘は水痘のワクチンで、はしかははしかのワクチンです、インフルエンザのワクチンは3種類のインフルエンザが入っています。前年に、WHOというところで「来年これが流行しそうだ」というのを決めて、世界的に同じワクチンをつくって、Aが2種類、Bが1種類入ったワクチンが1個の中に入る。そういうワクチンなのです。

岡部ちょっと一つ。WHOが決めたのを参考にして、感染症研究所が追加するんです(笑)。

横井そういうことです。ですから、1種類ではないということですね。だから、もしかしたらまたかかるかもしれないと。インフルエンザはほかのワクチンに比べたら、有効性については難しいです。かかってしまう子もいるんですね。開業していると、自分のところで打った後にかかられると、「先生のところで打ったの?」と言われるんです。「打ったから、ごめんね」と言うしかないんですね。そのぐらいしか効果がない。ただ、重症化するのには効果があるので、なるべく打ってください。

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