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座談会「子どもの心を育てる」

保育の現場で感じる親と子の問題

実際に、保育の現場をやられている水岡先生から、20年の保育の現場で親と子の問題についてのご発言いただけますか。

水岡冨田先生のお話を『ふたば』で私も読ませていただきました。『ふたば』の中では、前川先生のお話だったり、予防接種についてだったり、保育現場の中で参考にさせていただいています。私も子育てをしてきましたが、20年ぐらい前から、子どもの育て方は変わってきているなというふうにすごく思っています。

子どもとのかかわりの中で、子どもがケガをしたときに「痛い? 痛くない?」と親が聞くのですが、そのときに「どうする? あなた、病院行く?」「病院行きたい?」と、親が子どもに病院へ行くかどうかと聞くのです。それはお母さんが判断することでしょうと思うのですが、お母さんは何でも子どもに聞くんですよね。保育園の中でも「今日、お休みします」とお母さんからお電話が来て「わかりました。お休みですね」と電話を切った後に「先生、ごめんなさい。うちの子がやっぱり行きたいと言うので、行きます」と連絡が来ます。子どものことばに親が振り回されていると思います。

「わかりました。でもお母さんがお休みなら、おうちでゆっくりお子さんとかかわったらどうですか」「いや、ダメなんです。この子がどうしても今日は保育園へ行きたいって言うので」と言います。「午前中保育園に来て、お昼からはおうちで遊んであげたらどうですか」というお話をして電話を切ったあと、また電話が来ます。3回ぐらい電話が来て、「行こうと思って出ようとしたら、やっぱり休むわって子どもが言うので、やっぱりやめました」ということもありました。

「たまごっち」が流行っていたのは、15年くらい前でしょうか。親子遠足にもお母さんがたまごっちを持ってきて、それを育てるのに必死で、「先生今ね、ミルクやってるの」と私に見せるんです。子どもはその間ボーッとして、お母さんの顔をただ見ているんです。会話をしたり、触れ合うことのない親子の風景が見られました。

どうして子どもとかかわってあげられないのだろう?とすごく思っています。今はケータイ依存症の親が多くなっています。保育園は、登園・降園は保護者と一緒に来るのですが、親は携帯電話を見っ放しで、手をつないで来ない。何回も地域の方から「先生、危なかったよ。子ども一人で飛び出そうとしていたよ」と言われました。保護者の方に、「お母さん手をつないでこようね」「ケータイはお子さんを預けてから見ましょう」というお話をするのですが、依存症になっているので改善はされません。

これも10年以上も前のことですが、ままごと遊びの中でお母さん役の子が「お母さん、これからご飯買いに行ってくるからね」と言うんです。以前は、トントントントンと包丁とまな板で切るまねをして「今、お母さんご飯つくるよ」という姿だったのですが、今ではご飯は作るものじゃなくて買いに行くものとなっています。その子の保護者は毎日お迎えが遅くて、いつも帰りにお弁当を買って帰るという保護者だったので、ご飯は作るものではなくて買うものになっているなあと、そのときにすごく思いました。

また、ごっこ遊びの中で流行ったことで、イヌ役になりたいという頃もありました。どうしてイヌがいいのかというと、つながれてお散歩に連れていってもらって、ワンワンと鳴いたら「ごはん食べるのかい?」と言う。そういう、イヌになりたい子がすごく増えた時期があるんです。

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