正高私どもが一番困るのは、大学に子どもが入ってくる。本当に子どものまんまで学生さんが入ってくるわけで、親が過保護な親で、難儀するわけです。だから京都大学でも、入学式のときには必ず「父兄の同伴は一名まで」と書いておかないと(笑)、スペースがないわけです。一族連れて入学式に来るということが本当に起きるし、それから、何かあったら大学にクレームが来るんです。信じられないような話ですけど、親から大学にクレームが来る。大学生なんですけれど、幼稚園や小学校と変わらんような気持ち、PTAのつもりでおる親がいっぱいいてますね。
うちは学部がなくて大学院だけあって、大学院生というのはどんなに若くても23歳で入ってくるんですけど、「本当にこれが23か!?」というぐらいの子どもが入ってくるという状態になっているので困ります。だから、大学院生で引きこもるというのが、今、すごく多いと思います。要するに学部時代というのは、先生の言ったとおりに勉強していたらそれで難なくこなせるけれども、大学院へ入ると、何やかやで突然、おまえ、一人で判断して行動しろと。会社と一緒やと思うんですけど、そうなってきたときに何にもできない人間が増えている。そういう意味で言うと、ちゃんと心を、守るのではなくて、育てるということができていないのではないかなと思いますね。
私は学生を見ていて、最近、日本の子どもというのは本当に「生きる力」が希薄だなという気がしています。最近の大学院生はそれこそバブルを知らない。バブルの後に生まれた子どもさんが入ってくるんですけれど、本当に生きる力が……特に男ですけどね。若い男というのはどうしょうもないのしかいなくて、多分、会社もそうやと思うんです(笑)。どうしょうもない男しかいなくて、これから先、日本は少子で人口が減っていくわけですけど、中国、韓国、インドと戦っていくなんて、絶対に勝つわけないなあとしみじみ思うんですよね。
生きるというのは、難しいことを言っているわけではなくて、もう一つ、今年の夏もテレビを見ていて思ったんですけど、何であんなに熱中症、熱中症と言わないかんのか。
熱中症もそりゃ対策せないかんけど、鍛え方足らんやろというのが、非常に素朴に、心身ともに弱ってるんちゃうかなというふうなことを思っていまして、それは一体何なんだと。やっぱりそれは、子どものときからのしつけ、教育が、日本は根本的にどこか間違うてるんちゃうかと思わざるを得ないというふうなことを、今、思っています。