岡部インフルエンザは先ほどお話しなかったので、いただいたご質問、前にいただいたものも含めて幾つかお話しします。
一つは、このシーズンからインフルエンザのワクチンの子どもさんへの接種量が変更になりました。例えば、国内では長い間ゼロ歳児には1回0.1㏄が接種量になっていましたが、これはあまりにも少ない量で、「本当にこれで効くのかな?」と。私たちも思っていたのですけれども、それは一気に変えられないので、データを積み上げてきました。それには子どもさんの協力と親御さんの協力——子どもさんは親御さんが言えばいいけれども、親御さんの協力・理解をまずいただかなくてはいけないので、相当時間がかかります。でも、その結果、例えば0.1mlだった子どもさんに0.25mlをあげたほうが、抗体の上がりがよく、免疫を持つ人の割合も増えます。副反応の発生状況もほとんど変わらない。それらのデーターから、3歳までの子どもには一律に0.25ml、それ以上は0.5mlになりました。
年齢によって接種量が0.1ml、0.2ml、0.3ml、0.5mlと分けられているのは、実は医者のほうにとっても煩雑で、医学的にはあまり変わらないんだけれども、「あっ、いまの子、本当は0.2だったけど1カ月足りないのに0.3やっちゃった」とかいうことは、ないわけではないんですね。そういう煩雑さを防ぐ意味もあります。
諸外国の例は、子どもさんは0.25ml、大きい子どもから大人は0.5mlという、わりに単純なやり方になっているので、横井先生のパンフレットにもあったように、なるべく簡単で、なるべくやさしいほうがよりいいので、そこを安全を確認したうえで簡素化したという意味もあります。
それで本当に効くかどうか。ああいうワクチンが効くか効かないかは、免疫があるかないかで見ているだけですから、本当に効くか効かないかは、今シーズンを過ぎてみないとわからないという、医学のちょっと曖昧なところが残ってはいます。でも、理論的には問題ない、効果はあるだろうというふうにして変えられました。
この方のご質問はとてもいい質問で、「外国は1回でしょう?なぜ日本は2回?」というご質問です。日本の場合、子どもさんは2回接種が原則です。外国、といっても米国ですけれども、米国は一番最初にやるときは2回接種ですが、翌シーズンからは、前のシーズンの記憶が多少あるので、それを刺激する意味も含めて1回接種、としています。、日本は小児は検疫の獲得が大人より良くないので、小学校卒業くらいまでは2回接種が必要、という考え方です。米国でも1回接種を見直した方がいいのでは、という研究もあります。最終的にどっちがいいかというのは現段階ではわからないですけれども、いま、日本は少なくとも量は増えたけれども2回接種となります。
これは、インフルエンザという病気とワクチンのクセなんですけれども、子どもに対するワクチンによるインフルエンザの免疫というのはつきにくいものなのです。大人のほうは、いままでの人生の経験の蓄積も含めて基本的な免疫が蓄積されているので1回でいいけれども、子どもは2回必要だろうという説のほうで、日本は2回接種をやっています。
1回接種した後、インフルエンザになってしまった。その後、2回目どうしましょうか、というご質問。これもなかなか難しいので、そのシーズンの流行をよく見なくてはいけないんですけれども、たとえばA/香港型インフルエンザに罹った人は、もうB型や、A型のもう一つの型であるA(H1N1)パンデミック(いわゆる新型インフルエンザ)にはかからない、とはいかず、またかかってしまう、ということがあります。つまり1シーズンに別の型にそれぞれ2回かかる人が、そう多いわけではありませんがときどきおられます。となると1回ワクチンをやったけれど、インフルエンザかかってしまった人が、もう今シーズンはインフルエンザにはかからないか、というとそうでもないので、2度目を警戒してやはり2回目を受ける、というのはなるべくかからないようにするという点では正しい方法ではないかと思います。1回かかっても、あと2つ免疫が足りないままになっているのだから、2回目も受けておいた方がいいですよというのが医学的には正当な説明になると思いますけれども、「1回やったからいいわ」という方のほうがたぶん多いだろうと思います。ただ、例えば何か基本的に病気のある方とか、重症になるかもしれない人とか、そういう方の場合はきちっと2回受けたほうが、より安全度が高いのではないかと思います。
接種時期は、「流行した最中にインフルエンザのワクチンを受けてもしょうがないのではないか」というご質問も一緒にあって、本当は病気にかかる前に免疫をつけておくのがいいので、11月か12月ぐらいが一番いいんですね。不運な人は12月にかかってしまうから、間に合わない。ラッキーな人は3月ぐらいにかかることもあるので、1月に受けても間に合うということもありますから、どっちがいいという方法はないのですけれども、早ければ早いほうが、よりいいし、遅く受けても悪いことはないけれども、メリットはその分だけ少なくなります。ですから、本当はシーズン前に受けていただいたほうがいいけれども、駆け込みもまぁいいかというところではないかと思います。