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財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
4.総合討論(8)

前川次は「生ワクチンと不活化ワクチンの概要のところででた、液性免疫と細胞性免疫について判り易く説明してください」という質問です。判り易く説明するのはすごく難しいのですが、判り易く説明すると次のようになります。

免疫には抗体が関係している液性免疫と抗体が関係していない細胞性免疫があります。液性免疫は細菌やウイルスなどの病原体が身体に侵入すると好中球や単球が食べ、その抗原を提示すると免疫担当細胞が異物と認識しその情報をリンパ球のB細胞に伝えるとその病原体固有の抗体が産生されます。免疫担当細胞は出会ったことがある病原体(抗原)を記憶しており、次に同じ病原体が感染すると速やかに抗体が産生され、生体は感染から防御されます。

このように抗体が関与している感染防御システムを液性免疫といいます。抗体には免疫グロブリンG,免疫グロブリンA,免疫グロブリンM,免疫グロブリンEの四種類が知られております。大部分の抗体は免疫グロブリンGにあります。免疫グロブリンAは初乳や粘膜から分泌される分泌抗体です。免疫グロブリンMは抗体産生の初期に上昇する抗体ですが、大腸菌、ブドー球菌や百日咳感染と関係している抗体です。免疫グロブリンEはアレルギーと関係している抗体です。不活化ワクチンや生ワクチンで産生される大部分の抗体は液性抗体です。これに対し、抗体が関与していない免疫システムを細胞性免疫といいます。大きい細菌や異物は食べて殺すことが出来ませんのでT細胞が異物(抗原)を認識し、種々のサイトカインを出し、キラー細胞や白血球、単球などを集め異物を攻撃して排除する仕組みです。大きい病原体、異物、移植片などを排除する免疫です。ポリオ生ワクチンや噴霧型のインフルエンザ生ワクチンは局所免疫(細胞性免疫)と抗体の両方が産生され、自然感染に近い防御機構が構築されます。ポリオは経口感染し、感染したウイルスは腸内で増殖し、体内に侵入する前に腸管の局所免疫(細胞性免疫)ができます。

噴霧型インフルエンザ生ワクチンは咽頭で増殖し細胞性免疫を作るのと一緒に体内に侵入し抗体を産生します。生ワクチンは局所免疫(細胞免疫)と液性免疫の両方が獲得できるというのはこういう意味です。ポリオ生ワクチンも腸管の局所免疫と抗体を産出します。……それからツベルクリンを注射すると結核に感染していると局所が赤く腫れてきます。これも一種の細胞性免疫です……。

その辺は岡部先生、補充してください。

岡部困りましたね。免疫のすごく難しいところで、しかも、細かいところに入り込んで、いろんな説が出てきたりしますけれども……。ごく簡単に言ってしまうと、免疫の作用というのは、血液中にある血清(血液の水分)の部分と、それから、血球成分といわれる好中球、リンパ球などの白血球細胞の部分が、免疫に大きな役割を果たしているものです。生体の中に病原体が侵入してくると、これを最初に攻撃するのは血清のほうです。「抗体」といわれる蛋白はこの血清中に含まれます。ジフテリアにしても、百日せきにしても、ポリオにしても、麻疹にしても、この抗体が病原体を攻撃します。次に、細菌であれば好中球という白血球が、ウイルスであればリンパ球が攻撃をかけます。免疫というのは非常にうまくできていて、一度侵入した相手をよく覚えていて、また同じ相手がやってくると、ただちに攻撃を仕掛け、発病しないうちに抑えてしまうこともあります。麻疹や水ぼうそうに2回かからないことや、あらかじめワクチンで免疫をつけておくとかからない(かかりにくい)というのは、このようなメカニズムによるものです。

これを本格的に説明し出すと、医学部学生でも1時間や2時間かかったりするんですね(笑)。で、学生が最後に「ウーン…よくわかりません」と。なかなか説明がうまくできなくて申し訳ないのですけれども、このぐらいのところでごまかさせてください。

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