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財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
2.「乳幼児期に必要な予防接種と接種スケジュール」

国立感染症研究所 感染症センター長 岡部信彦先生

それから、数多くかかるということは、何遍も医療機関に行かなくてはいけないので、ひょっとすると、その間に例えばインフルエンザがはやったとか、麻疹(はしか)がはやったというときに、かぶってしまう可能性があるので、そういう意味での受診回数は減らしたほうがいいということと、29回医療機関に行かなくてはいけないわけですから、結局、トータルでかかるチャンスがそれだけ増えてしまうということになります。しかしこれは便宜上、同時接種というやり方をとっていますけれども、将来的に言えば、例えば今度国内でも実用化されるIPV(不活化ワクチン)とDPTの4種混合ワクチンなどのような混合ワクチンがもっと開発導入されるようになると思います。IPVは、大臣は秋ぐらいと仰っているようですが、少なくとも年内にはDPT+IPV、つまり、DPT(ジフテリア・破傷風・百日せき)と不活化ポリオの4種混合ワクチンが導入されそうです。

検定などに関することについては先ほど申し上げた通りですが、このワクチン(DPT+IPV4種混合ワクチン)は臨床治験を日本で重ねて、メイドインジャパンのワクチンなんですね。外国のワクチンではない。DPT+IPVを臨床治験をやって、いま、それに対する書面での評価といいますか、きちんとつくられて、そのデータはどうか、第三者が見ている段階です。それに合格して国の承認が下りてから、今度は検定といって、世の中に出回るワクチンが適切につくられたものかどうかを評価します。それに合格して初めて製品としての製造が行われます。

となると、これは1日や2日ではできないのです。例えば一つは動物試験というのがあって、動物に接種して、その動物が5匹中1匹も異常反応を起こさないとか、そういうことを見ながらやっていくわけで、どうしても時間がかかる。それが秋になるか、今年中になるか、そういった状況になっています。

しかし、これは一歩一歩進展しているので、ご質問の「どうして日本で研究をやらなかったのか」というのは、研究はやっていたんですね。そういうそれぞれの過程がなかなか進みにくかったのは事実ですけれども。また一方では、日本はずっとポリオという病気がなくて、飲むワクチンで2回だけでよかったので、注射を試しにやってみますかといっても、協力してくれる人がなかなかいない。つまり治験に協力・参加してくれる方は非常に少なく、我が国では、治験にものすごく時間がかかってしまう、ということもあります。

それから、さっきメイドインジャパンと言いましたけれども、不活化ワクチンの製造法には2つの方法があって、外国の製品は野生型ポリオという、病気になる強毒のワクチンを原材料としてウイルスを不活化してワクチンをつくっています。これが世界中で使用されています。一方、オランダとか日本が開発のスタートを切ったのですけれども、もともとワクチンにする弱毒ポリオウイルスを原材料として、これを不活化して不活化ワクチンを作ろうとする方法です。受ける側にとっては両方とも同じワクチンで、効果も安全性もさほどの差はありませんが、製造する側にとっては強毒型ウイルスを扱うよりは弱毒ウイルスを扱っているほうが安全性が高い。例えば、そこの工場が爆発したとか、ウイルスが盗まれた、そういうときに漏れても大丈夫だというのは弱毒タイプです。また強毒型ポリオウイルスは、製造時に宇宙服のような姿でウイルスを取り扱うP4レベルといった最高レベルの高度実験室安全設備が将来必要とされますが、これらは弱毒ウイルスの場合にはレベルが緩められるので、製造上のコストも下げることができます。その点で世界じゅうがこの日本製のワクチンに注目していますが、日本でこれが開発断念となると、現在開発を進めている中国やインドが、世界中にワクチンとして市場に参入してくることになるでしょう。

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