横井いまは、ワクチンを受ける方向になっていますけれども、定期接種化の方向に、ここ1〜2年、なりそうなワクチンはありますでしょうか。
岡部議論中のこともあるので、この議論というのは必ずしも全部が医学的ではなくて、最終的には国の予算の問題なんですね。一種類の枠の導入に何百億円というお金が要るためにはどこを削るかとか……そうすると政治絡みの話になってくるので、例えば、消費税が増えればワクチンの定期接種化は増える。これは可能性があると思いますけれども、消費税が増えた部分が全部ワクチンに行くわけではないから、そこにいろんな議論が起きます。
それから、足りない分のワクチンを急に増やそうと思うと、消費税が増えなくてもどこかから持ってこなくてはいけないというのがあるので、結局は、自治体も国も財源をどうするかということで悩んでいます。
我々はちょっとそういう意味ではずるくて、医学的なことを検討するほうですけれども、医学的には、子どもたちは病気にかかるよりはかからないほうがいいのだから、それをワクチンで防いであげたほうがいいだろう。そのほうが医療費がかからないことと、「病気になったらどうしよう」という不安と、治るだろうと思っても、1週間、10日休まなくてはいけないとか、そういうことをひっくるめて、安全であるワクチンならばできるだけ広く使われたほうがいいだろう、と考えています。
ただ、その順番を考えるときには、全部お金はかからないほうがいいですけれども、できるだけかからないものをつくるには、優先順位がどうしても出てきます。その中で急にふって湧いたように出てきたのが、Hibと肺炎球菌ワクチンとヒトパピローマウイルスワクチンです。あれは、去年から、特別の財源と特別なやり方でできて、1年間だけだったのですけれども、それが来年度も予算としては確保できているという話があります。ですから、平成25年度になるとたぶん切れるはずです、いまの制度から言うと。でも、切れっ放しでは困る。せっかくスタートしたのだし、2年間だけ予防接種してもその効果は知れたものです。そうすると今度は、税金の負担をしても、逆に言えば公費で一人ひとりのお金がかからないような形にしたほうがいいのではないか、という意見のほうが強くなっています。
それだけではなく、いま、予防接種法そのものの改正の話があるので、定期接種という形で、一人ひとりの方の負担を少なくする形でのワクチンの種類をもっと増やそうではないかと。ただ、その優先順位が、いま言ったような形でいろいろな意見があるので、スラッとは行かないですけれども、候補として挙がっているのは、Hib、乳幼児用肺炎球菌、ヒトパピローマ、水ぼうそう、おたふく、成人用肺炎球菌、全新生児へのB型肝炎などです。
肺炎球菌は小児用と大人用があるというのは、先ほど横井先生から話がありました。肺炎球菌の大人用ワクチンは以前からあったけれども、あまりポピュラーではなかったわけです。しかし、この頃は非常にコマーシャルも行き届いたというか、理解があって、高齢者の方がインフルエンザワクチンと大人用の肺炎球菌ワクチンを接種すると、肺炎になる可能性あるいは軽くなる確率が高くなるので、接種を受ける方が増えてきています。これは高齢者向けのワクチンと言っています。肺炎球菌と名前がついているから間違いやすいのですが、中に入っている成分、肺炎球菌のタイプというのは全く違ったものなので、間違って打っても別に悪くなることはないですけれども、効果がないので、そこはきちんと分けなくてはいけない。この高齢者の肺炎球菌23価ワクチンを、インフルエンザと一緒のような形で接種する。つまり、これも公費負担でという考えも出てきています。
ロタワクチンは認可が下りて使えるようにになったばかりなので、そこまでの議論は、いま話したワクチンよりは一歩遅れています。
繰り返しになりますけれども、これはいま議論中の話で、僕が厚生労働大臣なら、「いいよ!」と大盤振る舞いしたいのですけれども、それをやってしまうときっとほかの財源がなくなって、ほかから、これはどうなるのかという話が出ると思いますから、そこは全体的な話として動きをよくごらんになっていてください。ただ、そういう議論は行われていて、予防接種法の改正はたぶん来年の通常国会にかかるのではないか、そんなことが言われています。
横井ありがとうございました。