また、今の子どもたちはお話を聞けない。保護者もそうなんですけれども、目を見て話せない。ケータイでは話せるけれども、コミュニケーションがうまくとれない子が多い。子どもたちも映像ばかり見ているので、私は絵本と語りを大事にしています。
小澤俊夫先生の「昔ばなし講座」というのを札幌で受ける機会があって、昔話というのはすごくいろんな要素を含んでいて、耳で聞いてそれを頭で想像する。そういうことを大事にしたいなと思って、子どもたちに昔話を語ってあげると、子どもたちは「絵がないの?」と言うんですよね。「今日は先生、お話だけするから耳で聞いてね」ということで、伝えています。「お話を聞く時は、先生の目を見てね」ということも話しています。私が前に立つと、2歳の子でも、先生が何かお話しするんだなということで、目を見てくれるようになりました。保護者の方にも、こういうことをしていますということを発信するようにしています。
前川今のことについて、どんなことでも結構です、ご自由にご発言ください。
山口これは多分、正高先生のご研究だと思いますけれども、語りの言葉の持っている音楽性というか、リズムが、言葉を習得する上でも大事かと思うので、いつも必ず絵というのではなく、聴覚的な情報だけから想像を膨らませて聞くというのは、全身の体を使う聞き方だと思います。そういうのが今の子どもたちはすごく少なくなってしまっていて、それで、いろんなごっこ遊びができなくなったり、そういう問題に結びついているのではないかなと思いました。
前川正高先生、今のことで一言。
正高パフォーマンスをするのが、今どき、できない人がすごく多いですよね。先生がされるのはいいんですけれども、子どもさんがほかのところで、同じような語りをしてくれる大人というのが非常に少ないので、そういう人を増やす作業も必要なんじゃないですかね。
「ブックスタート」というのがあって、たしか恵庭市が結構熱心なんですけど、恵庭市は、その辺の暇にしているじいさんを集めて、父親の語り隊というのを組織してやっていると前に市長が言っていました。確かに、そういうふうな語りをやってくれる大人、ボランティアをいっぱいつくって、保育園みたいなところに来てしゃべってもらうということは、企画としては面白いのではないかなと思います。