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財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
3.「小児科医・園医の立場から—複雑で接種しにくい日本の予防接種」

東京小児保険協会副会長 横井こどもクリニック院長 横井茂夫先生

ですから、予防接種は同時が世界標準なんだと。そういう方向に日本は向かっていっているので、お母さん、なるべく同時にして、保育園ではなるべくうつらないようにしましょうと。でも、うつらないようにしましょうと言っていても、ワクチン以外の病気がたくさんありますから、そういう病気はもらわざるを得ないんですね。

いま言ったことをまとめたのが【表19】です。

表19 米国の場合、日本の場合

アメリカの場合は、7種の同時接種が基準です。アメリカの場合は、公的なワクチン、先ほど一覧表を出したあのワクチンを受けていない子は、公立の幼稚園、小学校、中学校、高校に入れません。よく、日本から行くときに、ワクチンが足りないのでもう一回受けるという話をされるのは、そういうことなのです。予防接種は原則無料です。予防接種センターというところで受ける場合と、かかりつけの医師で受けることがありますが、予防接種センターというのは、アメリカでは、予防接種のことをちゃんと勉強した看護師さんが、無料で予防接種をします。

日本の場合は定期接種は無料ですけれども、任意接種は有料です。それから、生ワクチンの後4週間とか、不活化ワクチンの後1週間あけるというのは、日本だけが決めているルールです。日本では、ロタのワクチンを生でやって、BCGのワクチンを生でやって、少なくともロタを2回やると、1カ月間、1カ月間、1カ月間で、ほかの予防接種を受ける機会がなくなってしまいます。でも、ほかの国では、別にいいですよというのでやっているわけです。そのあたりも、今後、たぶん変わっていくと思います。

それから、私が一番腹立つのは、任意接種で自費でお金を払った分の領収書を持っていても、日本では税務上の医療費控除の対象になりません。これは皆さん方から税務署に言ってほしいんですね、何とかしろと。というのは、予防接種をすると病気の数が減って、医療費が少なくなって、いいことなんだけれども、医療費控除にならないというのは、予防接種は美容整形と同じ扱いです。これはどう考えてもおかしいのですが、それが日本の現状です。

それから、日本では、予防接種をしていない人に対して、積極的に「してください」というアナウンスが少ないので、予防接種をしないまま保育園を過ぎて小学校に行く子がいます。そういうお母さんに、皆さん言いにくいですよね。でも、「お母さん、やっていただいたほうがいいのよ」ということだけは言ってください。

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