冨田それに関連しますけど、おサルの毛づくろいというのは、脳が発達したことによって出現したと、あるところで読んだのですが。
正高でも、先生、毛づくろいしないサルというのがおるんですよ。
冨田そうなんですか!?
正高新世界ザルのなかにリスザルというのがいるのですが、彼らはまるっきりしないです。ほとんどしないです。一年見ていて一回するかぐらい、ちょっとやるんですね。それから、ホエザルというのもしないです。ですから、汚いんですよ。毛が長いですから、シラミやノミでくっさい、くさい(笑)。大変なサルなんですけど、毛づくろいしないサルがいることはいるんですよ。
よくおっしゃるのが、毛づくろいが刺激になって、コミュニケーションは大事だと言いますけど、リスザルは別に毛づくろいをしないけど、ものすごく大きな群れでちゃんと社会性は発達しているから、我々からしたら、そういうことが面白いですね。むしろ、「なぜしないのか?」ということ。なぜ毛づくろいなしでも社会的ネットワークが成立するのか。毛づくろいをすることによって……。
冨田触覚が人間にとっても、サルにとっても、最も重要な対人(猿)関係を育てるものと思ってたんですけど、そうじゃなくても……。
正高あるんです。僕はそっちのほうが逆に面白かったりするんです。
冨田そうですか。
正高でも、普通は毛づくろいは非常に大事だということがよく言われますね。伝統社会でも、お母さんが子どものシラミをとってやるとかいう毛づくろい関係を、一生懸命調べている人もいてはります。
山口リスザルの特徴的なコミュニケーションの仕方というのはあるんですか。別の手段で。
正高それが意外にないんですよ。何でしないんですかね? 不思議ですね。してもおかしくないのに。そういうのは一体、遺伝的にどうなっているのかなと逆に思ったりしますね。