財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
3.「小児科医・園医の立場から—複雑で接種しにくい日本の予防接種」
東京小児保険協会副会長 横井こどもクリニック院長 横井茂夫先生
【表22】は発育・発達・予防接種を記録する母子健康手帳についてです。今日は、予防接種は日本は世界に比べれば遅れている、遅れているという話で、暗くなる話だったのですが、母子健康手帳は世界で日本だけです。こんな便利なものはないです。お願いがあるんですけれども、手帳の後ろのほうを皆さん一回読んでください。保育士さんも読まないし、看護師さんも、保健師さんも読まないんです。後ろにとてもいいことが書いてあるので、それをお母さんと読むと、いかに母子手帳がいいかわかります。
母子手帳というのは、アジア、アフリカにはありません。なぜでしょう? アジア、アフリカのお母さんは字が読めないのです。字が読めないからこそ、7つとか6つの混合ワクチンを短時間でやる。そうしないと病気が防げない。でも、日本のお母さんは予定を全部ケータイに入れています。いろいろやっているから、いまのシステムで何とかやっていける。そういう意味では日本のお母さんたちというのはすごいんですね。でも、やはり楽なほうがいいと思うので、これからの予防接種はよくなるほうに変わっていくと思います。
海外に行く人について、お子さんを連れて海外に行くお母さんたち、お父さんたちが多いです。そういうとき、向こうのことをどうだろうかと心配する人がいます。いろいろ調べても、いろんな書き方があるので難しいのですが、ある程度正しいのは、外務省のホームページから、渡航関連情報、在外公館医務官情報、世界の医療事情と、順番に開けていくと、どこのまちにどういう先生がいるかと書いてあります。予防接種はそこの国ではこうなっているとか、乳幼児健診はどうなっているか……。
どういうことかというと、外務省の公館があるところには必ず医務官という医師も行っています。その医師が地元の状況を書いて、それを集めてあるので、これが一番正しいように思われます。もしも海外に行く人がいたら、ニューヨーク、サンフランシスコ、ベトナムのホーチミン、そこに大使館、公使館がある場合には、書いてありますので、これを渡してあげるとお母さんたちはとても喜びます。日本語のできる先生のクリニックの名前が書いてあったり、予防接種がどうなっているかとか、そういうのがその地域ごとに書かれているので、たぶん新しい情報では一番いいと思います。
これをお土産にしてもらって、「予防接種はエチケット」と。お母さん早く打ってちょうだいと、そういうふうに伝えてほしいのです。よろしくお願いします。
前川ありがとうございました。