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財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
4.総合討論(7)

横井続きまして、日本脳炎の予防接種が一時中止されていて、2年ぐらい前から再開されている。忘れているお母さんとか、途中までやっている人とか、年齢が定期接種の幅から抜けている人とか、いろいろあって、1回だけで終わっている人とか、2回目まで終わって追加をやっていない人とかありますけれども、あれは、「何でもいいから4回受けてください」で、いいのですか。

岡部そうですね。

横井何か無茶な言い方なんですけれども、そういうことですか。

岡部一番基本的なことは、基礎免疫といって、最初の3回を受けていればいいので、間隔が少しぐらいずれても医学的には問題ないです。つまり、1回だけワクチンを受けて、2〜3年できなかった子は、その後、2回をやればいい。ただ、これが5年も10年もあいてしまうと意味がないので、そこは3回です。じゃあ、4年半はどうするか……そこはきちんとデータが全部あるわけではないので、その人の顔色とお財布の具合を見ながら説明をしますけれども、一番覚えておかなくてはいけないのは、「足りない分を受けておいてください」、これが基本になると思います。あとの部分は少し応用が出てくるというふうに思います。

流行性耳下腺炎のことで2つ挙がっています。私も、これはぜひ聞きたいと思うことですが、「流行性耳下腺炎は、なぜ一側性のことがあったり、一度かかって一側性だと、もう片方が腫れたりするのでしょうか。同じ体内に免疫ができても、そのようなことが起こるのでしょうか」という質問です。

横井先生が全部で4回と言ったのは、その後の年長の……。

横井そうです。年長も含めてです。

岡部9歳、10歳も含めてですね。

横井一生の間で4回受けておけば大丈夫。それから、日本脳炎という病気は日本の病気だと思いがちですけれども、これは先生、日本じゃないですね。アジアの病気なんですね?

岡部そうです。

横井ただ、アジアの人たちは日本脳炎を知らないまま病気になっています。ですから、まだ一部の国しかやっていません。日本に生まれただけではなく、少なくとも最初3回——2回やって1回の追加をやって、何年か先で合わせて4回をやっておかれたほうが、海外に行ったときにもかからないです。

「水痘、おたふく2回接種は知りませんでした」というご質問、これは難しいんですね。先ほど言ったように、公費というか、税金で、ほかの国は2回やるということを決めているからできますが、日本で2回やろうと思うと、2回分お金を払わなければいけないので、それで僕もなかなか患者さんに勧めにくいのです。

それから、日本の場合、水痘の場合には、病気になった段階では、ほとんどが保険とあとは公費負担、医療証で、自己負担がない形です。その人に、自己負担で任意接種を2回打ってと言うのは難しいので、僕は実際には、「1回だけ打っておいて」というふうにしています。2回はなかなか勧めにくいので。

おたふく風邪のワクチンは、水痘よりは1回の効果はもっと強くなりますから、「1回でもたぶん大丈夫でしょう」と言っています。特におたふく風邪は、よく、調べてみないと免疫があるかどうかわからないというけれども、この場合は調べるとお金がかかるので、もう考えないで、かかったことがはっきりわかっていなければ、「打っておくほうが得ですよ」と。

岡部先生、それでいいんですね?

岡部はい。では、ついでですけれども、「免疫のある人にワクチンを打つと、悪くなるのではないか」というご質問があります。つまり、知らずに水ぼうそうにかかった人に水ぼうそうのワクチンを打つ。「この子は1回水ぼうそうのワクチンを打ったけれども、2回もやったら危ないんじゃないですか」と。免疫を持っている人に重ねてやってそれが過剰になるというのは、例えばジフテリアとか、ごく一部の病気のワクチンを除いては、通常は重ねてやっても大丈夫です。

自分の話をすると、また横井先生のあれと同じですけれども、うちの子どもに間違って当時1回接種だった麻疹のワクチンを2回打っちゃったことがあって、後で子供を外来に連れてきたかみさんと大喧嘩をしたことがあります(笑)。「いや、これは理論的には大丈夫だ」と言っても、母親の心配は大変ですから、ちゃんとそういう説明はしなければいけないと思いますが、安全度は高いです。

前川それから、水痘のワクチンのことで、高齢者になると帯状疱疹が出てくるんですよね。その予防には効きますので、ある程度……ここにいらっしゃる方は関係ないですけれども、体力が落ちてくるような方には水痘のワクチンを打っておかれたほうがいいと思います。それだけです。

横井あとは、治ったかどうか、重症の人か、登園許可証を出すようにと、これは保育園側の管理の問題で求められるんですけれども、本当に必要かなといつも思います。でも、やはり制度上やらざるを得ない。それにお金がかかるという地域がありますけれども、一部の医師会は、保育園や幼稚園部会との話し合いで、園医制度の中でちゃんと園医の料金をもらっているのだから、子どもたちの治癒証明書とか、登園許可証を無料にする方向になっていると思います。ですから、一部お金を取る先生に関しては、ひとつの保育園で言ったりすると生意気だと言われてしまうので、地域の保育園部会から、地域の小児科の医会というか、小児科医の集まりがありますから、そこに、「すみませんけれども、負担がかかるので何とかしていただけないでしょうか」という形で要望書を出すと、わりと小児科の先生は、「しょうがないや、あの紙だけは無料にしようか」という方向になると思います。

ですから、治ったかどうかというのはわかっているわけだから……さっき岡部先生もおっしゃったけれども、お母さんたちは、5日休むよりも4日休むほうをとるんですね。だから、秋田県の場合には、インフルエンザとわかったらもう関係なく「5日休み」と。そこで小児科の先生がしゃべっちゃえば、お母さんも5日休みと思ってくれるわけです。それを、熱が下がって2日間とか3日間と言われると、熱を測りながら考え込んでしまって、「明日から行こう」と思ってしまう。

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