母子健康協会 > ふたば > No.76/2012 > 特集 座談会 「子どもの心を育てる」 > 保育の現場で感じる親と子の問題(2)

座談会「子どもの心を育てる」

冨田らしいですね。昔はみんな争って「お母さんになりたい」だったんですね。既に10余年前から何もしなくてよいペットになりたいと言い出したらしいです。

水岡そうなんです。ペットになりたいんです。

冨田もうだいぶ前ですけどね。

水岡そうですね。今は完全にテレビの影響で、ヒーロー物や戦隊、AKBになっています。ゲーム、テレビの影響で、その中に入り込んでいる子どもたちがすごく多いなというふうに思っています。親子で触れ合って、遊んでいない家庭の姿が見えています。若い保育士になると、保育士自身も遊びを十分に経験していないので、ごっこ遊びをうまく展開できないところがあるなと思っています。子どもとかかわる保育士や親の問題があると思います。

前川途中で御発言いただいたけれども、冨田先生、今の発言について。

冨田まさに保育士や親が生身の対人関係を体験せず育っているから、環境的に、それはますますエスカレートしていきます。私は20年くらい前からテレビゲームが盛んになった時、子どもたちが家へ集まって、お互いの交流なく、テレビの画面と線でつながっているから「けしからん」と言うてたんですけど、今では線もつながらない(笑)。ネットゲームで素性のわからない相手と対戦している。20年前なら、一応は友達の家で知っている相手とやっていたのですが、誰かわからん人とやって何とも思わない。だから、先生がおっしゃった「守る」の時代かもわからないですけど、やっぱり育たせなきゃとは思いますが。

前川山口先生、どうですか。

山口ケータイとか、ゲームとか、テレビとか、そういうバーチャルな情報があふれていて、すべてバーチャルな方向に進んでしまっていると思うんですね。人間は、五感のうち7〜8割はバーチャルな情報が占めているという研究もあります。

前川そんなにですか?

山口ええ。ただ、生身の人間のふれあいこそが、人との関係、コミュニケーション力をつけるのに欠かせないものだと思うので、こういう傾向は由々しき問題かなと思いますね。

前川正高先生、いかがですか。今のお話をお聞きして。

正高IT化も大きな問題ですけれども、もう一つは、何といっても少子社会ですから、夫婦に子どもが多くて二人なわけで、一人か二人ですよね。三人ぐらいいると、子どもたちだけの一つの社会というのが家庭の中でできるんですけど、それが永遠にできないですから、いつまでたっても親と子どもとの関係というふうになってきて、親にしても負担が増えている。子どもが減るほうが親の負担は増えるというところがあると思います。

身体成長について言うと、昔よりも体位は向上して成長は早くなったと思いますけれども、社会的な成長というものは非常にテンポが遅くなって、僕は昔の倍ぐらいかかっているのではないかなと思っています。昔、15歳で元服したのが、今は30歳ぐらいだと思うんですね。今、30歳で結婚するといったら、どう考えたって早いなあという感じですよね。30歳で結婚するなんて、まずいないわけです。そういうことを考えると、社会的成長のテンポが非常に遅くなっているのは、ごっこ遊びができへんような幼稚園時代を送っているわけですから、当然だという気がしますね。

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