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財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
2.「乳幼児期に必要な予防接種と接種スケジュール」

国立感染症研究所 感染症センター長 岡部信彦先生

任意接種というのは、やってもやらなくてもどっちでもいいというワクチンではなくて、みんながやったほうがいいけれども、国の予算や何かの関係で使用について国の承認は得られているけれども、定期接種として決められていることの枠外でやっているものになります。したがって実際上のやり方としては、やりたいという希望者に対して「そうですね、やったほうがいいでしょう」という考えの医者がやることになります。しかし法律で縛られてはいないから、例えば接種時期とか、そういうものも比較的楽に決められるし、費用も医療側はある程度自由に決めることができる。任意接種ワクチンというと、一瞬、どうでもいいワクチンのように聞こえますが、どうでもいいワクチンではなくて、予防接種法という法律で決まっているワクチンか、その法律で決まっていないワクチンかということになります。

任意接種のワクチンはそれでは自由に製造販売がされているのかというと、決してそうではなくて、日本で通用しているワクチンは定期接種であろうと任意接種であろうと、必ず最初は臨床治験というのをやります。それは、よく予防接種のことがわかっている先生たちが、自分の話をよく聞いてくれる患者さんたちに協力を求めて、試験的な接種をするわけです。観察ももちろん厳しくする。最初からどういうやり方をするということを決めて、その成績を見て、積み重ねて、「これは安全性はほぼ大丈夫だろう」と国から製造販売の承認がされます。

承認の下りたワクチンは、ちゃんと製造されているかどうか、国家検定ということが行われます。ワクチンの入れ物の蓋のところにシールが入っているのに気がつくと思います。それには国立感染症研究所と記入されています。つまり日本のワクチンは、その製造がどういうふうに行われていて、きちっとある基準の範囲に入った製品であるかどうかがチェックされています。——車で言えば車検みたいなものです。車検を通ったものだけが使える。ただし、車検に通ったものだから、相応の責任はメーカーも持つし、定期接種の場合だったら国が持ちます。何か問題が起きたときには、そこで被害に対する救済などができている。これが日本の市場に出回るワクチンです。これは定期接種であっても、任意接種であっても、きちんとそういう形がとられているワクチンです。

例えばこの間、Hibと肺炎球菌ワクチンの接種後に突然死亡したという報告が相次いだことがありました。そのような時、いろいろな調査の中では、そのワクチンきちっと製造されたワクチンかどうかということをメーカーが自主的に調査すると同時に、国家検定についても検査がきちんと行われ、条件がクリアされたものであるかどうかについて、全部さかのぼって確認が行われます。そういうことができて、あのワクチンはちゃんとつくられたワクチンだったなということが証明できるわけです。国家検定がないと、たまたま具合の悪いものが製造されたとしてもチェック機構がないことになります。

ワクチンというのは、化学的につくったものと違って、生物学的なもの(生物製剤)なので、全部が均質の製品ではなくて、ある幅があります。つまり、たとえば含まれている蛋白質の量は、何ミリグラムと決められているのではなくある幅を持っています。その幅に入っていればいい、という考えです。

もしその基準から外れた場合、これは「検定に外れる」と言いますけれども、その場合はワクチンの出荷をストップし、回収します。でも、当該のワクチンすべてをストップするわけではなくて、製品のあるグループごと、ロットといいますが、ロットごとに検査をしていくので、当該のロットが通常はストップさせます。新聞を見ると、何とかのワクチン不良につき出荷停止というように出ていますけれども、それは事前にチェックしているという意味です。自動車が走り出す前に、ブレーキの不具合があれば動かさずに止めます。飛行機でもやっていますね。離陸の前にアナウンスがあって、機械に不具合があるから直してから出発しますとか、そういうようにワクチンの検査というのは出荷前にロットごとに必ず行われています。したがって、時間がかかったりするわけですけれども、安全性が高いというのはそういう意味で言えると思います。

それから、どうしてワクチンの接種に順番ができてしまっているかという点をお話しします。先ほどの【表7】を見ていただくと、予防接種法という法律で決まっているワクチン(定期接種ワクチン)と、法律では決まっていないけれどもやったほうがいいワクチン(任意接種ワクチン)について、2つの色分けにしてあります。左から右へ、出生時、1歳、4歳、5歳、7歳と年齢がありますけれども、年齢によって、やるワクチンが違う。どうしてこんなのが出てくるのだろうという質問をよくいただくのですけれども、やはりかかりやすい年齢というのはそれぞれによって違うので、早くやるワクチンもあれば遅くやるワクチンもあって、決して遅いから放っておいていいわけでもないし、早いから緊急性があるというわけでもありません。

でも、例えば予防接種法の中に入っているDPT三種混合は比較的早いほうです。ポリオも早いほうで、BCGもわりに早いほうになります。この3つは、赤ちゃんのときにかかると非常に重症になる。特に百日せきは新生児でもかかることがあり、この場合は典型的な咳はあまり見られず、急に息苦しくなって呼吸が止まってしまうというようなこともあります。これは早くやった方が良いワクチンになります。

BCGは結核の予防のために行います。結核は日本はかつてに比べれば非常に少なくなりましたが、いわゆる先進諸国の中ではダントツに多い方です。アジアの中ではまあまあ中くらいということです。したがって日本ではBCGは重要で、特に乳幼児の重症結核を防ぐためには早期の接種が必要になります。

最近の小児結核は、子ども同士での感染ではなく、おじいちゃんやおばあちゃんなどのお年寄り、あるいは保育園・幼稚園・学校などでは、職員から子供への感染です。大人はまず定期健診きちんと受けて、結核が見つかれば早期にきちんと直す。大人の結核は今は治せる病気です。しかし、子ども側は早くから免疫を持つ必要があるので、BCGをなるべく早くやります。

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