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座談会「子どもの心を育てる」

前川おサルの集団になりますと、赤ちゃんは集団で育てるのですか。

正高いえ、それは種によりますけれど、基本的にニホンザルのように複雄複雌で暮らしていて、オスが複数、メスも複数いて、繁殖期にメスが不特定のオスと交尾をするので、生まれてきた子どもの母親はわかりますけど、父親は誰かわからない。つまり、お母さんしかわからない。父親はDNA解析しなければわからないというような社会構造で暮らしているサルは、母親だけが子育てをします。

前川それは、子どもを産んだ母親が育てるのですか。

正高そうです。

前川ほかの母親は育てないのですか?

正高たまにキッドナッピング(誘かい)というのがあります。自分の子どもを亡くした途端によそから取ってきたりするやつはいますけど、原則はメスだけがします。ところが、一つの群れの中にオスが成体オスが一頭しかいなくて、いわゆるハーレムシステムをつくるような、そういう社会構造で暮らしているサルはオスも子育てをします。それから、お姉ちゃんとか周りもいっぱい子育てをします。「アロマザリング」と我々は呼びますけれども、そういうマザリングをほかの個体が頻繁にするということもあります。そのかわり面白いのは、そういうハーレムシステムで、よそのはぐれオスが来て突然群れを乗っ取ると、今度は子殺しをします。そこにいる子どもを全部殺します。

僕が一番面白いと思っているのは、テナガザルという類人猿がいるんですけど、あれは核家族で暮らしています。ペアと子どもなんです。木の上にペアで子どもといて、お父さん(オス)もお母さん(メス)も両方、子育てをするので、人間の核家族みたいなもんだろうと思っていたんです。

ところが、最近はDNA鑑定ができますから、調べてみたら、確かにあるとき見たら必ずペアでおるんですけど、結構入れかわるんですよ。要するに離婚があるわけです(笑)。数年単位で入れかわっているんです。子どもはずっとおるんですよ。何のことはない、DNA鑑定をしたら子どもは婚外子なんですよ。つまり、よそのメスが来て前の男とくっついて、前のメスの子どもだったりするんです。それでも子殺しはないんです。血のつながっていない親子が、平気で一つの核家族をつくって暮らしているのはテナガザルだけです。あれはすごく面白い社会構造ですね。

前川なるほどねえ。

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