財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
3.「小児科医・園医の立場から—複雑で接種しにくい日本の予防接種」
東京小児保険協会副会長 横井こどもクリニック院長 横井茂夫先生
あと、【表20】をご覧下さい。注射が嫌いな子、いますよね。今日、予防接種に行くというと、朝からビビッてる男の子がいると思います。年長さんぐらいで。そういう子にはこう言ってほしいんです。注射の前に、「大きな注射器と小さな注射器、どっちが好きか先生に言いなさい」と。これ、泣かなくなるんですよ(笑)。特に耳元で、「ボク、大きいのがいい? 小さいのがいい?」と言うと、子どもは必ず、「小さいの!」と。そう言った後ろから、「あんた大きいのにしてもらいな」(笑)と言うお母さんがいますが、絶対大きいのをしてはだめなんですね。同じ注射器なんですけれども、「小さいよ」というのでやると、それで泣かないです。
それから、注射をする前に打つところを親指で押しておくと、これも泣かないです。これは昔、「伊東家の食卓」でやっていたんです(笑)。泣くのは減ります。
それから、注射を刺した瞬間に、「おしまい!」と大きい声で言うんです。それから入れていくんです。そうすると、子どもは泣かないです。泣かないと、次泣かないんです。一回泣いちゃうと、もう病院に来たときから泣いてしまう。
そういうことも、皆さん方……注射が好きになる必要はないけれども、でも、泣いてしまうと男の子って格好悪いんですね。どうやったら泣かないかというのは、「我慢しなさい」とかいうのではなくて、「小さいのを頼んでみなさい」というのが一番いいと思います。「大きい注射器と小さい注射器」というので、本当に泣く子は減ります。これは関西の先生に教えてもらったんですけれども、それ以外は、医者のほうに注射してもらうんです、終わった後。そうすると、子どもはすごい喜びます。これは針なしですよ。注射した後に針を取って、本人に渡して「先生に注射して」と言うと、ギュッとやる。先生が、「痛い、痛い、痛いッ、大丈夫だなあ」とか言うと、もう次から泣かなくなります。
あとは、注射器をお土産にする。これも男の子の場合、泣かなくなります。ただ、これは関西の先生に言われたので、「それ、保健所と警察に叱られるよ」と言われて、いまはやめています。関西ではあれは危ない道具で〝こういう方〟たちが使うので(笑)、子どもに持たせるのはいけないと言われてしまったので、やめています。
ある年齢になったら、逆に何にも言わないで注射したほうがいいんですね。こういうごまかしをすると、今度は子どもに馬鹿にされます。男の子というのは特に変わっていきます。そういう意味で、子どもの発達に合わせた注射の仕方というのは、逆に保育士さんとかそういう人たちからうまく話してもらうと、方法も変わっていくと思います。