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座談会「子どもの心を育てる」

冨田冨田です。私は臨床一筋できましたので、系統的な研究をこの分野ではしていません。しかし、前川先生が言われたように、小児科医として、臨床を通じて、次の世代の子どもたちが幸せに育ってくれるようにと、いつも考えてきましたし、心身医学を志したのも子どもを総合的に診たい思いが強く働いた結果と思います。

一般に小児科医は体中心に診ているので、臨床現場で「もう少し心をも診なければ」という思いから、当初は「心を重視し過ぎた」時期を10年余り過ごしましたが、その後、小児科医として「やはり原点は体では」と思うようになってきました。それは「感覚」特に「触覚」がいかに子どもの成長に大きな役割をするか、ということを、正に肌で感じるようになったからだと思います。つまり、山口先生と同じ考えに、臨床を通じて行き着いたのです。本当に最近の子どもたちは触覚を育てる環境に乏しいのです。テレビやビデオの普及もそうですが、コンピュータから携帯電話に行き着いた子どもの遊び環境は、まったく触覚を育てません。その上、群れをなして、生身の対人関係をお互いに育てる機会が極めて乏しくなっている環境は、本当に怖いと思います。

更に、このようなIT機器の進歩と普及に加えて、戦後教育の問題に思いが行きます。戦後教育は日本の歴史や伝統をあまりにもないがしろにし、日本という本来は非常に感覚を大事にした文化を持っていた国を滅ぼしかけかねない状況を出現させました。要するに、戦勝国による、日本の伝統・文化・歴史を重視しない教育が、このような面でも問題になっていると思います。

私は今、一所懸命、近現代史を勉強していますから、学校で教える教育と正反対のことを発言するようになり、私の発言はしばしばイデオロギー的に捉えられます。幸いにもこの『ふたば』では持論を2回に渡って掲載していただきました。実は理事長が私の中学、高校の同級生であることもかなり関係しております(笑)。

正高先生がモーツァルトの話をされましたが、子どもが童謡やモーツァルトの音階に興味を示し、好むようであるというような自然の現象は、現時点では科学で証明できないし、理屈で割り切れない部分がありますが事実です。私は学問世界での科学的研究でなくても、長年の臨床から思い至った子育てで大切なのは、感覚の重視と、自分の国の伝統や歴史や文化を大切に教えていくことではないか、と思っています。

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