母子健康協会 > ふたば > No.76/2012 > 保育に必要な予防接種の知識 > 乳幼児期に必要な予防接種と接種スケジュール(4)

財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
2.「乳幼児期に必要な予防接種と接種スケジュール」

国立感染症研究所 感染症センター長 岡部信彦先生


それから、今度は任意接種のワクチンの話になります。Hib、肺炎球菌——これは最近、我が国で取り入れられたワクチンで、標準的には生後3カ月からやるようになっています。これは不活化ワクチンだから、わりに早くからやっても良いことになります。そういう意味での安全性は高い。Hib(ヘモフィルス・インフルエンザ)による髄膜炎や敗血症、同じく肺炎球菌による髄膜炎や敗血症などは、1歳をピークにし、下がってきます。それは、だんだん丈夫になってくるというのもあるし、細菌としては身の回りによくいる細菌ですから、病気にならなかったけれども、免疫だけはうまい具合にできたという子が2歳、3歳になると増えてくるためと考えられます。そうすると一番防がなくてはいけないのが、お母さんからもらった免疫がなくなってきて、そして、外との接触が多くなってくる6カ月ぐらいからです。となると、6カ月でやってもすぐに免疫ができるわけではないから、3カ月ぐらいからスタート、ということになります。

ですから、2歳過ぎて、あるいは1歳過ぎてやるのが、意味がないですかと言われると、意味がないわけではない。でも、どうせやるならば早いうちからやったほうが、早くその子を守れるということです。1歳過ぎになってやっていない子が、「どうしましょう?」、「それは、まあ、やったほうがいいんじゃないですか」という説明になります。それはやって悪いことはちっともないし、メリットはある。けれども、どうせやるなら早くやったほうがいいという言い方になります。

ヒトパピローマワクチン(HPV)についてお話をします。HPVには2価と4価ワクチンの2種類が書いてあります。これは子どもの病気ではなく、大人になって性に関連した感染症として知られています。性は人々にとって当たり前の行為・行動ですから、ということは、誰もが感染するチャンスがあるわけです。でも、感染したからといって全員が病気になるわけではないし、感染者の一部が子宮頸がんなどになるわけですが、できるならばあらかじめ防いだほうがいい。どうせ防ぐならば、うつりやすい時期の始まる前に免疫をつけなくてはいけないから、多くの国々では、子どもたちが性交渉を経験する年代になる前にやろうというようになっています。でも、それもまた国によって違い、性体験が早い国もあれば遅い国もある。

日本は、その辺の世界の様子と国内の状況、それから、子どもたちが受けてくれるだろうと思われるような年齢も考えて、10歳からスタートというのが大体の線になってきています。ですから、これを9歳でスタートしている国もあれば、もっと後でスタートしている国もあります。

60過ぎ、と言うと60過ぎの人には悪いのですが、僕も60過ぎだからいいでしょう。60を過ぎた人が、「私もパピローマワクチンを接種してもらいたい、不安だから」という問い合わせがありました。これはやっても悪いことはないんです。やっても悪いことはないけれども、大切なワクチンだからその分お孫さんに回してくださいというご返事をしました。年齢の幅というのはそういうことになります。

水痘(水ぼうそう)、おたふくかぜワクチンは、かかりやすいのは、保育園に入ったり、幼稚園に入ったり、集団生活が始まるとそこで広がりやすいので、できるだけその前にやったほうがいいでしょう。でも、お母さんの免疫のなくなってくる時であるとか、あるいは、免疫不全という特殊な病気に関してある程度問題がなくなってくるような頃として、1歳過ぎがいいでしょう、となっています。

水ぼうそうワクチンとおたふくかぜワクチンとどっちを先にやったらいいのかという質問もよくいただきます。それは特に決まりというのはなく、流行状況によって決めることになります。北海道で水ぼうそうが流行していれば、そこは水ぼうそうワクチンを先にやったほうがいいし、九州でおたふくかぜが流行しているならば、おたふくかぜワクチンを先にやってください、という説明になります。

B型肝炎ワクチンは日本の場合は、B型肝炎のウイルスを持っている、キャリアーと言いますが、キャリアーのお母さんから生まれた子どもさんに、出産後早くまずガンマグロブリンという抗体を接種をする。そしてその後ワクチンを接種します。これは、出産のときにウイルスがうつってくる可能性があるので、まずガンマグロブリンでウイルスをたたく用意をし、そしてウイルスと競争するような形でワクチンを接種して免疫をつける。ワクチンでつけた免疫のほうが早く体内で立ち上がるので、このできた免疫で、お母さんからもらってしまったウイルスを攻撃できるだろう、という考え方です。

これも、所変われば品変わる、というより日本がB型肝炎ワクチンについては独特の方法を取っています。海外では、妊娠された方を丁寧に検査するのは、お金もかかるし手間もかかるので、生まれた新生児すべてにB型肝炎ワクチンを接種するというのが主流です。国内でも中には、ワクチン接種を早くやっても、うまくいかないとか、あるいは、お母さんが免疫を持っていないので何もしなかったがお父さんがキャリアーでそちらからうつってしまったとか、それこそ集団生活をすると、友達や職員からうつったのではないかという例もないわけではないので、結局、そういうのを総合して生まれた赤ちゃん全部に早くからB型肝炎を接種してはどうかという議論が行われています。

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